履きやすい靴って何ですか? という質問をいただきました。

履きやすい靴って何ですか?単純な質問ですが答えるにはちょっと時間が必要です。

先日、初めてご来店のお客様から、ふと、そう聞かれました。
この質問は、しばしばされることがあるのですが、単純な質問なのに、単純には答えられません。そのときも答えるのに、というよりも説明するのに時間がかかったのですが、それには理由があります。

 

基本的には、3人に1人にとって履きやすい靴であれば、とても優秀な靴だと思います。
中には、3人のうち2人が履きやすいという靴もたまにあります。

でも、先ほどの質問をした方に、「この靴が履きやすい靴ですよ」と言って、3人に2人が履きやすいと言う靴を見せても、この場合の求められている答えとは違います。

この質問をする方は、たいていの場合、いつも同じ場所に何らかのトラブルがあります。

ですから、最初こうお答えします。
「仕入れる靴を選ぶとき、こういうトラブルがある人はこの靴が履きやすいだろうな、とか、あのお客様のタイプの足にはこの靴は合うだろうなとか、何らかの悩みがある方が、それを感じることなく履ける靴はどれかを考えています。ですから、何か靴選びに問題があればお聞かせいただけますか?」

こう聞くと、小指が痛い、外反母趾が…、足の裏が痛い、踵が痛いなどなど、皆さんそれぞれに、いつも靴が合わない理由をお持ちです。

この方の場合は、「踵がいつも抜けてしまう」というものでした。

ということは、踵が抜けない靴が、このときのこの方にとっての「履きやすい靴」ということになります。

この方がそのときに履いていた靴は、プラットフォームのパンプスでした。
プラットフォームというのは、靴底の前のほうも厚くなっていて、その分ヒールを高くすることが出来ている靴です。

先に結論を言いますと、この方の靴の踵が抜けやすいのは、股関節の固さからきています。

立ち方、歩き方からすぐにその特徴はわかります。股関節の固さによる歩き方では、底の返りのない靴は踵が抜けやすいです。

ですから、この日に履いていたプラットフォームという靴は、厚底で返りが悪いため、相性の悪い靴というわけです。

パンプスでも、返りの良い靴であれば、抜けることなく履ける靴もあります。
実際、ちょうど修理に持って行こうと思っていたといって、持っていた靴は、もっている靴の中で1番履きやすい靴で、踵が抜けないそうなのですが、底が薄く、返りはとても良かったです。

そういう話を一通りして、その方にとっての履きやすい靴とは、底の返りが良く、かかとが抜けにくい靴ということになりますね、とお話しました。

ただ、それよりも大切なのは、股関節の固さを和らげることだともお伝えし、ご予約をいただいてその部分の対処を行うことになりました。

このように、人によって履きやすい靴の条件は変わります。
自分が足に合わないと思う靴を履いたときに、どこに不都合を感じて合わないと思うのか、普段から気にしてみてくださいね。

踵が抜けやすい人について詳しく知りたい人はこちら

 

 

「膝を曲げると膝の外側が痛む人」は真っ先に「ここ」をチェック!!

膝を曲げると外側が痛い場合、よくある原因の一つに腸脛じん帯炎というものがあります。

立った状態で太ももの外側を触ると太もも全体を縦に走る、ベルトのようなスジを触れます。(筋肉のように柔らかくないので慎重に触れば分かると思います)これが腸脛じん帯で、このじん帯は、腰骨からスネの骨の一番上の外側までの長い距離を結んでいます。

股関節と膝関節を超えて、骨盤とスネの骨を結んでいるということです。

 

腸脛じん帯炎の治療として、安静、ストレッチ、鍼灸やマッサージ治療、ランニングフォームの改善など、さまざま言われていますが、これら全てをやるよりも先にチェックするべきことがあります。

場合によってはこれが改善への最短距離ともなりえます。

 

 

腸脛じん帯に負担の掛かりやすい体型として、挙げられるのがO脚です。

O脚では、Oの字の外周に当たる腸脛じん帯は伸ばされることになります。

伸ばされるとじん帯は緩みがなくなり、膝の曲げ伸ばしで膝の外側の骨に強くこすられて、痛みを起こします。膝を曲げると膝の外側が痛む人は、この腸脛靭帯が炎症を起こしていることが多くあります。

 

O脚の人は、靴の外側が磨り減りやすいです。

靴の外側が磨り減ると、足は外側に傾きやすくなり、ますますO脚を強めることにつながります。

ですから、ほかの治療を行うよりも先に腸脛じん帯炎と思われる人が行わなくてはいけないのは、靴の底のチェックです。

靴の底を見てください。外側が減っていませんか?

修理ができる靴であれば、すぐに踵の交換をしましょう。

修理ができない靴であれば、靴の上側(アッパー)がどんなにきれいでも、買い換えることをお勧めします。

靴底が斜めに減った靴の底を平らに直すだけで、膝の外側へのストレスは驚くほど軽減されます。

 

ランナーズニー(又はランナー膝)とも呼ばれるくらいランナーに起こりやすいとされる腸脛じん帯炎は、対処法としてフォームの改善が挙げられますが、斜めになった靴では、フォームを改善しようにもうまくいきません。

 

走り方によっては踵の外側の減りが早く、底が減ってしまっていても、アッパーがまだきれいに感じる人もいるかもしれません。

そんな場合でも、心を鬼にしてその靴はあきらめましょう。

新しいシューズの購入をお勧めします。もしも、こまめな買い替えを躊躇するような高いランニングシューズをはいている場合、交換しやすいような価格のものを選択してください。

高額で高機能なシューズを、斜めになっても履き続けるより、低価格のシューズでも平らな状態を保てるほうが、腸脛じん帯に痛みがある人には価値がありますよ。

 

プロフィール

靴職人@村山孝太郎

鍼灸師から靴職人へ。鍼灸学校在学中、鍼灸治療では対応できない骨格へのアプローチとして、インソールが有効だと知る。自分の治療の手助けになればと思い、インソールについて学ぶが、インソールの入れ物である靴の知識の必要性を強く感じ、卒業後、鍼灸師として働く傍ら靴作りを学び始める。
その頃は、休みの日はもちろん、仕事が終わった後も、寝る間も惜しんで靴を作った。作業場だけでなく、自宅の布団脇にまで道具を持ち込み、連日ほこりにまみれたまま眠った。靴作りのおもしろさ、奥深さにすっかり魅了され、靴職人として働くことを決意。
鍼灸師として働くことを辞めて手製靴メーカーに就職する。同社主催の靴学校にて講師を務める中で、ドイツの整形外科靴マイスターと知り合う。もともと靴を学び始めた目的である、インソール製作はもちろん、整形外科靴製作と、その設計思想を本場で学ぶチャンスだという思いを抑えられず、単身渡独。その人物の紹介を得てミュンヘンの整形外科靴工房に入る。すでに靴作りも出来、足に関する知識もあったが、同じ靴でも考え方が異なり、手順が異なるとこうもやりにくいものかと初めは苦労した。しかし、新たな技術を学ぶことはたまらない喜びであり、毎日未知の技術、知識との新鮮な出会いだった。
ここで学んだこと全てを活かして仕事をしたいという想いから、自分の店を持つことを決意し、2007年、東京、上野桜木に靴とインソールの店rutsch(ルッチュ)をオープン。

独立後、顧客の相談を受け、その悩みの原因について考えるとき、靴作りの知識もドイツで学んだ整形外科靴の知識もそのままでは役に立たないことに落胆。それだけでは、既存の靴店などで行われていたことの寄せ集めだったと気づく。実際に役に立ったのは、鍼灸師として身に着けた知識と、治療家の目線で全身を見ることだった。
そこで、足の問題と全身の状態のつながりを明確にしてから、靴作りやドイツで身につけた技術と知識を使って対処するとうまくいく。そして、自然とそれが自分のスタイルとなり、どこに、どう対処するのか、これまでなかった方法が色々とうまれた。
このことを広めて足に悩む人を減らしたいという思いから、足と靴の学校R.F Academyを設立。靴が人々の健康にもっと身近にかかわることが出来るような仕組みづくりを目指す。